
毎年、ベストキス賞などユニークな賞に注目が集まるMTVムービー・アワード。今年からは、TV部門も加わって『MTVムービー・TVアワード』となり、新しいカテゴリーも追加された。また受賞の枠も男女で区別しない、史上初の“ジェンダーレス”となった。
このように、今回のMTVアワードは大きく改変し、受賞者のスピーチからも数々の名言が生まれた。私たち、そしてこれからの時代がどうあるべきか、彼らの心のこもったメッセージを共有して一緒に考えていこう。
Best Fight Against the System(システムとの戦い賞)
映画『Hidden Figures』
この物語は、1960年代の人種差別がひどく理不尽な社会の中で、NASAの数学者としてたくましく生きる黒人女性たちの物語。
■Taraji・P・Henson
(タラジ・P・ヘンソン)
「誰も“女性は科学や数学をすることができない”と言ってはこなかったけど、それは男性のものだという理解がありました。」
「他の幼い女の子が数学や科学をすることができないと考えながら成長していくことがないように、この考えを無くすことが私たちのミッションです。」
「この物語が伝えたいメッセージは一体性。女対男、ブラック対ホワイト、ゲイ対ストレート、このような分離主義の考えは嫌いです。私たちは皆同じ人間ですよね?神様は賢く、何か理由を持って私たちに違うものを与えました。だから私たちはよりよく理解することができるはずです。」
Best Kiss(ベストキス賞)
映画『ムーンライト』
この作品は、人種や性的マイノリティーなどの社会問題に光をあて、若い黒人が人生の中で体験する、性的指向に対する闘いが描かれている。
■Jharrel Jerome
(ジャレール・ジェローム)
Ashton Sanders
(アシュトン・サンダース)
「若い僕たちのような、特にマイノリティーのパフォーマーは、物語を伝えるために、何かを変えるためには枠にとらわれずにいていいということだと思う」
「この賞は僕たちよりも大きいもので、これはキスをこえたもの。自分を自分でないように感じる、人と違うように感じる、そんな僕たちのための賞だ。」
彼らが受賞したことはマイノリティーの中で生きている多くの人々へ希望を与えた。同性同士の受賞は5作品目、なんと10年ぶり。
昨年は“#OscarsSoWhite”(白人ばかりのオスカー)が話題になり、まだ根強く残っている白人中心主義への問題が上がった。批判を避けるためだけに使われる“トークン・マイノリティー”ではないことを望みたいところでもある。
Generation Award(ジェネレーション・アワード)
映画『ワイルド・スピード』
■Vin Diesel
(ヴィン・ディーゼル)
ヴィンは同作品に携わった監督やディレクターに感謝を述べたあと、「肌の色や国籍を問わないこの映画を、多文化を受け入れてくれる時代に感謝しなくてはいけない」
「ポールへの愛を捧げることなくこのステージで語ることはできない。このことを君が誇りに思ってくれていたら嬉しい。」と、亡き友Paul Walker(ポール・ウォーカー)へメッセージを捧げた。
男優賞や女優賞は俳優賞となり、この部門のプレゼンターを務めたのは、ドラマ『ビリオンズ』で性別を選ばない“ジェンダークィア”として出演しているAsia Kate Dillon(エイジア・ケイト・ディロン)
Best Actor in a Movie(映画部門・最優秀俳優賞)
■Emma Watson
(エマ・ワトソン)
「私にとって演技とは他の人の立場に身を置く能力だと思います。2つの異なるカテゴリーに分ける必要はなく、思いやりや想像力を発揮する能力に制限を設ける必要はありません。」
「多様性、リテラシー、一体性、喜び、愛を描き祝福するこの作品に携われたことを、とても光栄に思います。」
エマは国連のUN Women親善大使として、バングラデシュなどの様々な国に訪れ、ジェンダー平等のために活動を広げている。
エマは国連総会で「フェミニズムの定義とは男性も女性も平等に権利と機会を与えられるべき、という考えのこと」と示し、
「最近では女性が権利を主張することが、男性を敵視するような印象になってしまっていることも感じ、この世の中の意識を変える必要があります」
「男女平等の考えを持っていればそれは無意識のフェミニズムです。重要なのは名称ではなく、考え方や想いなのです。」と語った。
今回のアワードの結果と各受賞者のスピーチの中で共通していることは“平等”“多様性”そして“自分らしくいること“の大切さ。
“黒人だから”“ゲイだから”こういった理由だけで選択の自由が失われる。
“男性はこうであるべき”“女性はこうであるべき”こういったジェンダーステレオタイプが間違いだと気付かずに、自分を責める人もいる。私たちは気付かないうちにどれだけ縛られているのだろう。
彼らは演技を通して私たちに気付きを与え、希望を与えてくれる。彼らが言う通り、私たちはムーブメントを起こせるこの時代にいる。
多様性の大切さ、自由な選択ができない人がいること、平等な権利を持つことがどれだけ重要なことなのか、これらを知ること、そして実際に行動に移すことが私たちのやるべきことではないだろうか。
男性も女性も、弱く繊細で強くあっていい。私たちは同じ人間なのだから。たった一言、たった1つのアクションで私たちは支え合うことができる。まずは一歩、知ることからはじめてみよう。
写真:Instagram
文:CELESY Writer Yuki